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【十種競技】右代啓祐選手 (国士舘クラブ所属)インタビュー【後編】
陸上・十種競技の国内第一人者として活躍されている右代啓祐選手。
インタビュー後編では、ジュニアアスリートにも実践できる、運動パフォーマンスを向上させるジャンプ・スキップのトレーニングを実際に解説していただきました。
【右代啓祐選手プロフィール】
1986年生まれ。196cm、95kg。北海道出身。十種競技日本記録保持者。2012年ロンドン五輪、2016年リオ五輪出場。
大学から十種競技に取り組み、4年生時(2010年)に日本選手権初制覇。翌2011年、日本人初の8000点オーバーという記録を打ち立て、18年ぶりに日本記録を更新した。
日本人離れした体格で、十種競技の第一人者として10年にわたり世界の舞台で戦い続けているトップアスリート。
2014年、アジア大会の団体戦において五連覇を狙う中国を接戦で下し金メダルを獲得。
【アスリートナビゲーター・田中大貴プロフィール】
兵庫県出身。1980年生まれ。 兵庫県立小野高校卒、慶應義塾大学環境情報学部卒。
大学時代は体育会野球部に所属し、東京六大学でプレーする。
2003年~フジテレビに入社し、アナウンサーとして勤務。 「EZ!TV」「とくダネ」「すぽると」「HERO’S」、スポーツ中継等を担当。 バンクーバー五輪、リオデジャネイロ五輪現地キャスター。
2018年~独立し、スポーツアンカー、フリーアナウンサーとして活動中。 番組MC、スポーツ実況、執筆連載などメディア出演の他にスポーツチーム・団体・企業とのビジネスコーディネーション、メディア制作、CSR活動イベントの企画・運営も積極的に取り組む。
身体パフォーマンスを上げるのに役立つトレーニング
さて、インタビュー前半では、右代選手のジュニアアスリート時代のお話を伺いましたけども、後半では実践のトレーニングでお子さんたちが家でもできるようなトレーニングを教えていただきます。
~ジャンプの練習~
本当に基礎的な動きで、ジャンプしてくださいと言われて何も考えずにジャンプする時、普通は両腕を後ろに振りかぶって前に振り出すと思うんです。
ここで意識してもらいたいのは、腕を後ろから前に振り出す時、横から見て腕が体と重なった瞬間に引き上げる動作を始めると、体が浮くんです。重なった瞬間に引き上げる。
腕は必ず後ろまでしっかり大きく引いてあげてジャンプをするんですけど、それだけでは腕の力と脚の力だけしか使えていない。
そこで意識してもらいたいのは、胸を持ち上げる、背筋を伸ばす時にするような体を持ち上げる感覚をジャンプのタイミングに合わせてあげると、より高く跳ぶことができるんです。
それを意識しながら10回ぐらいですね。リバウンドジャンプと言って跳ねる、連続ジャンプをしていきます。
脚は伸ばしたままですか?
ちょっと曲がるぐらいですね。リバウンドジャンプをする時に体の軸が折れちゃったりとかすると、地面からの反力がもらえなかったりするので、しっかり体をまっすぐ整える事と胸を高く上げることを意識しながら跳んでみてください。
筋肉的にはどこを意識したらいいですか?
腕にもくるし、お腹にもくるし、前もも、大腿四頭筋の辺りにも来ますね。
腕や足だけじゃなくて全身の筋肉を使って持ち上げるようなイメージを持つことがすごく大事で、やっぱりジャンプと一口に語ってもいろんな跳び方があるんです。
例えば野球ボールを投げるのも腕だけでは投げないですよね。肩や腰、全身の筋肉を使って投げますし、サッカーボールを蹴るのも全身を使って蹴ったりするのと一緒で、ジャンプするのにも全身を使ってジャンプする事が必要なんです。そこに繋がりがあるかなというふうに思って、今回はシンプルにジャンプの仕方をご説明しました。
このジャンプトレーニングは、例えば、右代選手の十種競技でいくと、どういう所に活きますか?
もちろん走る動作もそうですし、跳ぶ動作にも通ずるんですけど、「プライオメトリクス」と言って腱反射を用いたトレーニングの1つがこのリバウンドのジャンプで。
腱反射?
アキレス腱の腱の反射を使ってやるトレーニングの1つで、僕も練習の時、実際に取り入れてます。腱に刺激をもらうことによって、より地面からの力をもらえる体に育っていくんですね。幼少期からこういう体の使い方を覚えておくと、より速く走れるようになったりとか、腱を鍛えることによって強い力を生めるようになると思います。
これは毎日何回ぐらいやったらいいですか?
そうですね。やっぱりジャンプなので何回やっても、縄跳び跳ぶぐらいの感覚でいいと思うんですけど。10回を5セットぐらいかな。子どもだったら全然できると思うので。
じゃあ、これができれば、走るのも速くなる。
そうですね。体の使い方を覚える上で引き出しが1個増えると思ってください。両脚のジャンプができるようになったら、今度はレベルを上げて片脚立ちになって同じような要領でやってみるとか。そうするともっと負荷がきつくなるので、こういった事もチャレンジしてもらえたらいいなと思いますね。
片脚で。うわっ!これはすべての動きに通じますか?
通じますね。
そうですよね。分かりました。右代先生、どうもありがとうございます(笑)
(笑)ありがとうございます。
~スキップの練習~
さて、次はどんなトレーニングを教えていただけますか?
ジャンプのトレーニングから少しレベルアップした、「スキップ」を紹介したいと思います。
スキップはいろんな要素が含まれていると言いますね。
そうですね。トレーニングのスキップはいろんな要素をプラスしていきますので、何気なくやるスキップと違って結構難しいんですよ。
今も練習に取り入れていらっしゃいませんか?
たまにウォーミングアップでやっていらっしゃいますよね?
はい。ウォーミングアップに取り入れています。走る前とか、切り返しの動作する時によくやりますね。
トレーニングにおけるスキップは具体的にどんなものがありますか?
右代:まずざっと見せていきたいなと思います。3種類あるんですけども。
1.高く跳ぶスキップ
1つ目が高く跳ぶスキップ。普通のスキップに、陸上的な動きを入れます。
うわ、高い!滞空時間が長いですね。
そうですね。滞空時間を長くしてスキップには見えないかもしれないですけど。ここで意識してもらいたいのは、しっかりと浮いている脚を真上に引き上げてあげることです。跳ぶ瞬間ににつま先が下がっちゃうと、上の力をもらえないんで、つま先をしっかり上げた状態で。
で、体の姿勢はまっすぐにするんですけど、ジャンプをする時の腕は、先ほどのジャンプでも言った通り、腕の線が体と重なった瞬間、でちゃんと胸で伸び上がるような力を合わせると、ビヨーン、ビヨーンという滞空時間の長いジャンプができます。
バスケットボールのレイアップとか、サッカーでヘディングをする時とか、野球もジャンプする時とか、いろんな局面で使えると思います。ジャンプする、高くジャンプする上に必要なのは、上に引き上げることと、姿勢ですね。
ありがとうございます。前回でご紹介したジャンプの要素をうまく取り入れた応用編という感じもしますね。
そうですね。
2.前に進むスキップ
今度は前に進むスキップですね。
前に進む?
走りに近づくような感じですね。どんなスポーツでも走る運動というのはあると思うんですけども。目線の高さを変えないで行うスキップです。ちょっと見ててください。
お、速い。速い!ちょっとスキップに見えないですけどね(笑)今意識されていたのはどんなところですか?
今のはスキップをした時のこの片足が浮いた状態、これを「遊脚」と言うんですけど、この浮いている脚を、さっきは真上に上げたんですが、地面スレスレというか、平行に移動させていく感じですね。
若干地を這うような感じのスキップに見えましたね。
そうですね。体が置いてかれないように、イメージとしては動体がそのまま平行移動するように。
上下にブレるような動きをしないで、そのまま平行に移動させてあげるような脚のさばきで行います。走る時って、胴体がガチャガチャって揺れながら移動するわけではなくて、ブレないまま同じ姿勢で平行移動していくものなんですよね。これがブレていくとどんどんロスが生じてしまうので。
じゃあもう、目線も目の位置もブレてない感覚ですか?
はい。そこを意識して、走る手前の練習をするのに効果的な運動が今の2個目のスキップになります。
3.細かいスキップ
今度はちょっと高く跳んだり前に進んだりというのとはちょっと違うんですけど、僕が体をコントロールする上ですごく大事だと思ってるのが、この細かいスキップです。
うわー、なかなか難しそうですね。
これができたら結構上級者なので。
これはどんな所を意識していますか?
とにかく脚は、膝を本当にちょっと前に出すぐらいのイメージですね。さっきまでのスキップはバカーンと開くような感じだったんですけど、拳1個分膝を出すぐらいのスキップなんです。まず初めは脚でリズムを取って、そこから、脚から腕に移行していくとやりやすいですね。
意識の連動というか、伝達がすごい難しそうですね。
そうですね。先ほどのように高く跳んだり前に跳ぶという動きよりも、力の出力は低いんですよ。体をコントロールするような練習になるので、やっぱりいろんなスポーツ、サッカーだったり野球だったりバスケだったり、球技にかかわらず同じスピードで走ることってないじゃないですか。細かく動かす時もあれば、大きく動かす時もあるし、それこそ速く動かさなきゃいけない時もあるし、自分の動きに幅を持たせることはすごく大事なんです。そういったコントロールする機能を、スキップを通じて養ってほしいなという思いを込めて、今回3つのスキップを紹介させていただきました。
非常に勉強になりました。スキップってたぶん誰もが通る道じゃないですか。そのスキップの中にも競技に繋がるいろんな要素が入ってくるんですね。
そうですね。何気ないものですけども、ちゃんと理由を持って「この種目に繋がるかもしれないな」って思うことが成長に繋がるポイントだと思うので、自分のやっているスポーツだとか、動きのどこが合っているかなというのを自分なりに探してみることも大事だと思うので、ぜひ親御さんとお子さんで話し合いながら、この動きとこの動きは似ているよねという共通項を探すみたいなコミュニケーションを取っていただけたらなと思いますね。
トップアスリートの右代選手が今もやっているというスキップのトレーニング、皆さんもぜひ参考にしていただければと思います。
さて、幼少期の話や、子どもたちに向けたトレーニングの方法など色々とお話していただきましたが、どうでしたか?
やっぱり自分が強くなる理由というのは、やっぱり幼少期にあったなというのも感じたので、親御さんと一緒に力を合わせて素晴しい夢を叶えてもらいたいなという風に思います。
まだ現役ですけども、第二、第三の右代啓祐が出てくるのを楽しみにしたいと思いますね。皆さんぜひ参考にして、右代選手のような大きなアスリートになっていただければと思います。右代選手、どうもありがとうございました。