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【バスケットボール】田渡凌選手(Bリーグ・広島ドラゴンフライズ所属)インタビュー【後編】
広島ドラゴンフライズ・田渡凌選手へのインタビュー・後編です。
今回は、ジュニアアスリートの皆さんから寄せられた質問や、練習のテクニックなどについて回答していただきました。
1993年生まれ。180cm、80kg。東京都出身。ポジションはポイントガード。
3歳からバスケを始め、京北高等学校(現:東洋大学京北高等学校)卒業後に渡米。
オローニ・カレッジ、ドミニカン大学カリフォルニア校を経て2017年に横浜ビー・コルセアーズに入団。
3季在籍し、通算159試合に出場。2020年6月に広島ドラゴンフライズ移籍した。キャプテンとして臨んだ今シーズンは41試合の出場で285得点(平均7.0得点)178アシスト(同4.3アシスト)を記録。
今シーズンの最優秀インプレッシブ選手賞(MIP)に選ばれた。
【アスリートナビゲーター・田中大貴プロフィール】
兵庫県出身。1980年生まれ。 兵庫県立小野高校卒、慶應義塾大学環境情報学部卒。
大学時代は体育会野球部に所属し、東京六大学でプレーする。
2003年~フジテレビに入社し、アナウンサーとして勤務。 「EZ!TV」「とくダネ」「すぽると」「HERO’S」、スポーツ中継等を担当。 バンクーバー五輪、リオデジャネイロ五輪現地キャスター。
2018年~独立し、スポーツアンカー、フリーアナウンサーとして活動中。 番組MC、スポーツ実況、執筆連載などメディア出演の他にスポーツチーム・団体・企業とのビジネスコーディネーション、メディア制作、CSR活動イベントの企画・運営も積極的に取り組む。
ジュニアアスリート達からの田渡選手へのご質問
田渡選手、前回はアメリカ留学など貴重なお話を伺いました。今回は多くのジュニアアスリートの皆さんから田渡選手に向けて質問をもらっていますのでお答えいただければと思います。
Q:田渡選手は子どもの頃、どれぐらい練習していましたか?
週5回ぐらいミニバスの練習があったのかな。放課後ミニバスの練習があったのと、もうどれぐらい練習したか分かんないですけど、でも、一日中バスケのことを考えていたと思います。
時間があればビデオを見ながら外に出て真似して、っていうのを繰り返したりとか、もう練習というよりも僕の遊びがバスケだったので「練習をやっている」という感覚でバスケをやったことがあんまりなかったように思います。
じゃあ、もうすべての生活がバスケのためにという感じ?
バスケが生活の中心でしたね。それは今も変わらないですし、子どもの時からそれが続いているという感覚です。
実技の練習はどれぐらいやっていました?
ミニバスの練習が3時間ぐらいあって、家に帰って…、やってもうちの外で1時間、2時間ぐらいですかね。だから長い時で一日5時間くらいをバスケの練習に充てていました。
Q:身長が高くなるために、体が大きくなるためにどんなことをしましたか?効果があるものはありましたか?
僕ももうちょっと背大きくなりたかったなって思ってる方なんですけど、やっぱりたくさんご飯を食べるっていうのは大事かなと思います。
食事をしっかり摂る、1日3食って言われてますけど5食でもいいし、いっぱい摂ってしっかり寝て、健康的な生活をすれば背は伸びるんじゃないかなって思いますね。
寝ることもやはり大事ですか?
寝るのはめちゃめちゃ大事だと思います!僕は今も睡眠はすごく大事にしているし、やっぱりどのアスリートも睡眠の質っていうのはこだわってる人が多いので。
長さだけじゃなくて質も大事ですか?
そうですね。21時から1時が睡眠のゴールデンタイムとかいろいろあるじゃないですか。そういうった要素も含めて、幼少期にたくさん寝ていれば身長が伸びるチャンスというのは大きくなっていくんじゃないかなと思います。
Q:憧れのプレイヤーやプレイをする上でイメージしている選手はいますか?
そうですね。今で言ったらNBAのトレイルブレイザーズっていうチームがポートランドにあるんですけど、そこのポイントガードのデイミアン・リラード選手っていう選手です。
あとはルカ・ドンチッチ選手、ダラスの。今日の朝もずっと試合を見ていました。
そういった選手の動きを見る時、特にどの辺を見ていますか?
やっぱり今はボールスクリーンと言って、「ピックアンド・ロール」という技が試合の中でも使われる事が多いんです。この2人の選手はリーグの中でもボールスクリーンの使い方はトップクラスだし。同じポジションなんですけど、そういうところで勉強することがたくさんありますね。
今日の練習でもそういった点を意識していた部分も多いですし、それが実際に試合で活かせたら自分の幅も広がっていくなという思いがあるので、そういうところを見ています。
やっぱりNBAの試合は見ていてお手本になりますか?
いやもう、世界のトップクラスの選手たちがいるリーグなので、教科書みたいな感じです。
Q:試合で活躍できるようにいつも考えていること、やっていることはありますか?
僕は、日常生活が試合につながるっていうのをすごく意識しています。やっぱりいい加減に生活をしているとそれが試合にも出てくる。
練習を怠ったら試合に出ますし、食事や睡眠も適当に食べたり夜ふかしなんかをしていると最終的にパフォーマンスに影響してくるという思いがありますね。人間関係もそうですし自分の言動・行動についても同じ事が言えると思うんですけど、僕はそういった事を大切にしています。
Q:スランプはありますか?どうやって抜け出しますか?
スランプはもちろんありますね。スランプというよりも調子が悪い時期っていうのは絶対にありますし、そういうときは練習します。そのときやってる普段の倍ぐらい練習します。やっぱり量をこなしてクリアしようっていうのを自分は今までずっとやってきたんですけど。
ブレイク・グリフィンっていう選手がいるんですけど、NBAでもすごい有名な選手で、その選手と2人でトレーニングする機会があってそのときに聞いたんですね。「調子が悪いときとかどうしてる?」って話を聞いたら「俺はその試合のビデオを何回も見ていつもよりも練習する。体育館に行って何が悪かったのかを考える」って言ってて、トップクラスの選手がそういう事をやっているんだったら、自分はもっとやらなきゃなっていう思いが強くなって。
そこで確信というか、やっぱり間違ってない、それをやらないと目の前の壁は乗り越えて行けないんだなという気持ちになりました。
スランプ脱出はやっぱり練習量。練習すること、バスケに没頭することですか?
そうですね。何が悪かったのかを考えながら練習するっていうのはとても大事だと思います。
Q:中学生の息子が田渡選手と同じポイントガードです。アシストを完璧にすると言ってゴール下に入っていても勝負せずすぐパス、パスアウトします。もっと勝負して積極的になってほしいと思うんですが、どういうふうにアドバイスしたらいいですか?
積極的に行かない、ということですね。自ら攻めてシュートに行くという姿勢を見せることで味方が付いてくるっていうのは、バスケにおいて基本的なことなんですよね。やっぱり自分が攻める気持ちを持って強気に攻めていかないと、周りに「こいつビビッてんな・こいつシュート打たないな」と思われるとヘルプにも来ないので。そういう姿勢を見せることが大事ですよね。
例えばNBAにはジェームズ・ハーデンっていうすごい選手がいるんですけど、彼がドリブルを突いているだけで相手が寄ってくるんですよね。そしたらいくらでもパスを出してシュートを打つチャンスが出てくるんです。そういうふうに、自分が相手に嫌だなって思わせる、こいつは脅威だなと思わせることが自分のアシストの数になったりとか、得点に繋がったりしていくことが凄くあると思うんです。だからやっぱり積極性を出して勝負をしていくということが、アシストがもっと生きてくるきっかけになっていくんじゃないかなと思います。
Q:進路について。強い学校に入るのか、それともクラブチームに所属する方がいいのか、どちらを選ぶべきでしょうか?
今はクラブチームがあるんですもんね。僕らのときはクラブチームがあんまりなかったですし、自分にはあまり進路を悩むという事がなかったんですけど。
僕は”どこに行くか”じゃないと思ってます。どこに行っても、「自分がこの道を選んで正解だったな」っていう努力と成果を出せればいいと思っているので、こうやってプロになってからチームを選んだり、今回は移籍もしています。どこに行くかじゃなくて、自分が行って自分が正しいと思った事を信じてやり続けるのが僕は一番大事だと思います。
Q:今までを振り返って、あの時これをやっておけばよかったなということはありますか?
ないです。僕は、これをやっておけばよかったって思わない人生を歩もうと思ってずっと今までやってきたので。それを思わないように、毎日毎日考えて練習してます。
素晴らしいですね。いろんな質問に答えていただき、ありがとうございます。
ここまではジュニアアスリートの皆さんからいただいた質問に答えていただきましたけれども、田渡選手もバスケットボールを幼少期からやっていて「もっと上手くなりたい」「こんなテクニックを身に付けたい」と思うことはやはり多かったですか?
そうですね。僕は探求心がすごかったと思いますし、小さい頃もプロの選手の試合をいっぱい見たし、NBAの試合もいっぱい見たし、見たことない技を真似してましたね。
年代にもよりますけど、やっぱり時分が一番やっててよかったなって思うのは、自分の場合は真似をすることでした。僕はもう真似をするのが神がかり的に上手かったので。シュートフォームを真似するとかじゃないですよ。ビデオで見た選手の技を真似したりするのがすごい得意だったので、そういう形でどんどん他の選手の技を自分のものにしていくのはすごく大事なことだと思います。今は技がどんどん増えてきているので、やらなきゃいけないことって多いんですけど。そういったところで技術を自分のものにしていくっていうのはすごい大事だなと思います。
ポイントガードのポジションはフェイントを使う事も重要だと思いますが、フェイントについてはどう教えますか?
膝を使うっていうのはすごい僕は意識してます。この間も子どもに教える機会があったんですけど。
膝の体重移動とか、前に上下にクッションを入れることで相手が止まったりとか、膝っていうのはすごく大事ですね。膝を緩く、ドリブルしている時も横にフェイントをかけることで相手の意表を突いたりとか。
それは小中学生でもできますか?
むしろ小中学生のほうが関節がまだ柔らかいと思うので、上手くできるんじゃないかなと思います。
どういう練習をするのが良いですか?
ドリブルを1回1回チェンジをする練習とかもあるんですけど、そういう時もただこうやってやってるだけじゃなくて、体を使って移動するときに足をしっかり使うっていうのはすごい意識してたし、やっぱり脚力がないと難しいですね。
どんなに相手の反対をついて抜けたとしても、振り切れるだけのスピードがなかったら相手に追いつかれてしまうので、そういうトレーニングというか、基礎的な走り込みっていうのはすごくやりました。
パス・ドリブルのコツ
パスとドリブルのコツをどのように子どもたちに教えていますか?
味方にパスする時に相手が手を出してたらキャッチしやすい所にパスを出すっていうのをすごい意識してもらいます。あと、やっぱり片手でパスを出せるっていうのはすごい大事な技術だと思います。
左手でも右手でもコントロールよく相手が打ちやすい所にパスを出せる練習っていうのをすごいしましたし、それはどの年代でも貴重なテクニック、スキルだなと思います。
ドリブルの時、目線はすごく重要だと思うんですがどうでしょうか。
ドリブルの目線はすごい大事ですね。初心者の頃って、難しいから突いているボールを見ながらやってしまうんですけど、それだと相手に取られてしまうからできるだけ見ないでドリブルをするのはすごく意識しました。僕が父親におそらく唯一技術的なことで教わったというか、これやったらいいぞって言われたのは、ビハインド(後ろ側)でボールを見ないで20回ぐらい連続でドリブルできるようにする練習をしていましたね。
ある程度腰を落とした状態で。
そうです。それはやっぱり自分の見えない所でどれだけボールの感覚があるかっていうのを養うためにも、ボールを見ずに突くというのはすごく大事なんですけど、その感覚を養うためにもいい練習だったなと思います。
ミドルシュートのコツ
田渡選手はミドルレンジのミドルシュートを多用して得意だと思いますけども、コツを教えてもらえますか?
ミドルシュートを打つ時っていうのは、走って行って、止まってバーンって上に上がるというシチュエーションが多いんですけど、しっかりストップすること、シュートって手だけで打ってしまいがちなんですけど、足を使って床を蹴るっていうのはすごい意識しています。
体が流れているとシュートは難しいので、ストップする時は走っている時の反動をしっかり止めて、まっすぐ飛んでまっすぐ着地するということをすごく意識しています。
やはり脚力が重要なんですね。
とても大事だと思いますね。僕は小学校も中学校も高校も割ときついチームにいたので、走り込みはすごくやったし、それが今でも生きてるなとは思います。
キャプテンとしてチームをまとめるのに大事なこと
田渡選手はキャプテンの経験も多かったと思いますが、キャプテンをやる上で大事にしていること、チームをまとめるためには何が重要でしょうか?
何をやってもみんなを納得させられるような行動をすることですね。練習一つ取ってもみんなよりも頑張らなきゃいけないと思ってやってたし、勉強にしても僕はちゃんとやって学年で上位の成績をキープしていました。何をやっても「キャプテンがやってるから俺もやらなきゃ」って思われるような人でいようというのはすごく意識していました。
英語で好きな言葉
アメリカに渡って英語も勉強されたと思いますが、英語で好きな言葉があれば教えて頂けますか。
ジョエル・エンビードという選手がよく使う言葉で ”Trust Process”と言うのがあります。「自分の課程を信じろ、自分がやってきたことを信じていこう」という意味なんですけど、それはすごく大事にしてますね。僕も練習を大事にしているし、日頃の生活を大事にしている中で、そういったことを積み重ねた延長に自分の試合があって、結果が出せるチャンスがあると思っているので。
「アメリカに挑戦したいです」という子どもたちがいたら、ぜひ行ってくださいと言いますか?
絶対言いますね!やはり挑戦なくして成長はないと僕は思っているので。自分が1番のところにずっといても成長しないですし、自分よりも上手い人がいる中で揉まれることによって、自分がやらなきゃいけなかったことっていうのは本当に見つかると思います。僕はそういう風に生きてきたので。
中学校で良成績を収めていますが、あれだけのことができたのはよく食べていたからだというのはありますか?
練習量がとにかく多くてきつかったので、食べないと身体がもたないというのは小さいなりに理解していたんだと思います。食べないとすぐ痩せちゃうので、それはすごく意識していました。揚げ物やラーメンなんかは身体に悪いんだろうなっていうのは思っていたので、そういうものは取らなかったり、甘い炭酸飲料は飲まなかったりしていましたね。
これからの広島での活躍を楽しみにしています。どうもありがとうございました。